新入生の皆さん、琉球大学へのご入学、誠におめでとうございます。
琉球大学が、ここ沖縄サントリーアリーナで入学式を開催するのは、今年度が初めてです。そして、この会場での記念すべき第 1 回目となる入学式において、琉球大学は、学部 1,591 名、大学院 328 名、総勢 1,919 名の皆さんを、新入生としてお迎えすることとなりました。琉球大学の在学生および教職員を代表して、皆さんのご入学を心から歓迎いたします。また、これまで皆さんを支え、皆さんのご入学を誰よりも喜んでいらっしゃるご家族ならびに関係者の方々にも心からのお祝いを申し上げます。
さて、皆さんには、これから学生の間は、学びたいことを好きなだけ学ぶ時間が与えられます。自分の「専門」と言える分野を究めていく学びの世界が皆さんを待っています。きっとわくわくしていらっしゃることでしょう。大学での学びは「学問」です。「学問」は、文字どおり「学ぶこと」と「問うこと」から成り立っています。皆さんはこれからたくさんの知識に触れ、専門的技術を身につけていくと思いますが、知識や技能の修得そのものより、私が重要だと考えているのが、「なぜ?」と問う習慣を身につけることです。
大学での学びは、視野を広める共通教育と、深く究める専門教育で構成されていますが、琉球大学では、琉大生全員に身につけてほしい知識や技能の体系を「琉球大学グローバルシチズン?乐游棋牌」と称して提供しています。「グローバルシチズン」は、日本語で「地球市民」と訳されますが、この乐游棋牌では、皆さんが、地域とグローバルを結ぶ幅広い教養や、社会性、自律性、倫理性を身につけ、地球規模の視野を獲得することを目標としています。英語にしたときの頭文字をとって、URGCC と呼んでいます。これからよく耳にすると思いますので、ぜひ覚えておいてください。
さて、URGCC のような、大学が用意した乐游棋牌に沿って体系的に学ぶことはもちろん重要ですが、大学は、自由に問い、自由に考えながら知を探究できる場所です。受身的に学ぶだけではなく、自ら問いを立て、それに対する自分なりの答えを出すために、何を学ぶかを自分で組み立て、思考を深めていくプロセスはもっと重要です。それこそが「学問」の本質だからです。
大学には、授業やゼミ、卒業論文、交換留学、課外活動など、多様な学びの機会があります。将来、「なりたい自分」に近づけるよう、皆さんには、ご自身の学びを自由に、そして主体的にデザインしていただきたいと思います。そして、この「主体的に学ぶこと」に加えて重要なのが、「批判的に学ぶこと」です。
今日、私たちは生成 AI という強力な知識の道具を手にしています。AI は膨大な情報を瞬時に整理し、答えを教えてくれます。しかし、これから専門知識を深めようとする皆さんは、AI の答えは必ずしも「唯一の正解」ではない、と考えるようにしてください。AI が提案する答えに対し、「それは本当に正しいのか」「別の見方はないのか」「もっと良い表現はないのか」など、批判的に問い直す姿勢が大切です。これを「批判的思考」、英語では、 “critical thinking”と言います。
「批判する」ことを英語で “criticize” といいます。“criticize”は、「何かを否定する」ネガティブな行為のように思えるかもしれません。日本の教育では、批判することは「いけないこと」のように教えられる場合が多いですが、実は“critical” も “criticize”も語源は同じで、本来は、「分析する」、「判断する」、あるいは「評価する」ことを意味します。つまり、「批判的思考」とは、単に「あら探し」をすることではなく、先人の研究成果と確かなデータに基づいて、粘り強く、丁寧に考え、判断することを意味します。「批判的に学ぶ」というのは、生成 AI の答えに批判を加えながら、真理を探究する能力であり、AI 時代には不可欠な能力です。
そして、生成 AI の答えが妥当かどうかを判断するには、高度な専門知識が必要です。生成 AI に盲従するのではなく、AI を道具として活用できるほど、専門性を高めてください。琉球大学では、様々な専門分野の研究者が、質の高い教育を提供しています。ぜひ、AI 先生だけでなく、人間の先生とも積極的に対話していただきたいと思います。
そして、学び方には、「主体的に学ぶこと」、「批判的に学ぶこと」に加え、もう一つ、重要な方法があります。それは「社会とつながって学ぶこと」です。大学での学びは、教室の中だけでは完結しません。環境、災害、平和、貧困など、現代社会には、複雑に絡み合うさまざまな課題があります。そうした課題を解決するには、インターンシップや地域活動などを通して、大学の外にいる人々とつながり、現場や当事者の経験から学ぶことも極めて重要です。大学で修得した知識を社会の中で試し、社会から教えてもらう??その往復の中で、皆さんの学びはより深く、より意味のあるものになります。さまざまな経験から学ぶという考え方は、琉球大学の理念にある「島嶼の知恵」とも深く関わっています。
この理念は、琉球大学のスローガンに集約されています。 “Island Wisdom, for the World, for the Future”というものです。日本語に訳すと「島嶼の叡智を世界へ、未来へ」となります。小さな島々は、色々な制限のある厳しい条件の中で存続してきました。その歴史の中で培ってきた経験知は、環境や平和など、地球規模の課題にもつながる、普遍的な示唆を与えてくれます。学問の役割は、島の人々の工夫や知恵の中に、未来社会をデザインするヒントとなる、新たな価値を見出していくことです。皆さんには、それぞれの専門分野で、島嶼の特色を活かした研究にもチャレンジしていただきたいと思います。
皆さんが琉球大学で、主体的に、批判的に、社会とつながりながら学ぶとき、その学びは、この沖縄という小さな島々から世界へ、そして未来へとつながっていきます。これからの琉球大学での学びを通して、皆さんが世界や時代をつなぐ「架け橋」となる人に成長されることを願い、私の式辞といたします。
令和8年4月2日
琉球大学
学長 喜納 育江